
フルサイズなら ぜんぶきれいに写る?
ふみ「今日は、この万年筆をきれいに撮ってみようと思って。せっかくだからフルサイズで!」
「何を見せたいの?」
りこ
ふみ「もちろん、全部。フルサイズなら性能がいいんでしょう?」
キャップの「Custom」の文字にピントを合わせ、少し斜めから一枚。ところが、写真を見たふみの手が止まります。
ふみ「文字は見えるけど、キャップの端がぼけてる。ペン先も……そこも見せたかったのに。」
「きれいにぼけることと、全部がよく見えることは、同じじゃないんだよ。」
りこ
今回のカメラと 撮影の条件
カメラの性能が高くても、撮りたい写真に合った使い方は必要です。今回は机の上の万年筆と、窓際に置いた食材を撮りながら、フルサイズ、マイクロフォーサーズ、スマホの使いどころを考えてみます。


使用したのは、LUMIX S5II+SIGMA 28–70mm F2.8 DG DN、OM-5+初代M.ZUIKO DIGITAL ED 12–40mm F2.8 PRO、iPhone 17 Proです。
写真は日常の撮影例です。構図・距離・露出・ホワイトバランスなどを厳密に統一した性能試験ではありません。色の優劣ではなく、見せたい範囲や寄りやすさ、その場で撮る手軽さに注目してください。
まずは絞って 見える範囲を広げてみる

「F値を大きくして、少し絞ってみよう。ピントが合って見える範囲が広がるよ。」
りこ
ふみ「F2.8から、F5.6、F8……F13。あ、同じカメラでも変わる!」


絞りを変えた写真では、キャップや軸の見え方が変わります。開放のF2.8は、ピントを置いた部分から離れるとやわらかくぼける写り。F13では、ペンの形を追いやすくなりました。
ふみ「それなら、全部F13で撮ればいい?」
「見せたいところが写れば、そこまで絞らなくてもいいよ。絞ると取り込む光も少なくなるから、手ぶれしないかなども見ながらね。」
りこボケが気になったら、まず少し絞ってみる。商品や小物を紹介する写真では、背景を大きくぼかすことより、必要な部分が見えることが大切な場面もあります。
ただし、どれだけ絞っても写真の隅々まで必ずくっきりするわけではありません。ペンの向きやカメラを構える位置を少し変えるのも、見せたい部分を写す工夫になります。
同じF値でも 使いやすさは変わる
ふみ「フルサイズでも、工夫すれば撮れるんだね。じゃあ、OM-5の出番は?」
「こういう小物を、広い範囲まで見せたいとき。マイクロフォーサーズの特徴が役立つよ。」
りこ

マイクロフォーサーズは、同じ画角・同じF値で同程度の構図を撮る場合、フルサイズよりピントが合って見える範囲を広く取りやすい方式です。今回の万年筆でも、キャップから軸へと見ていくと、ぼけ方の違いを感じられます。
ふみ「『ぼけにくい』って聞くと、少し残念な感じがしていたけど。」
「形や文字を見せたいなら、見える範囲が広いほうが助かるでしょう?」
りこ反対に、見せたい一点を浮かび上がらせたいなら、フルサイズのボケは魅力になります。キャップの文字を主役にして、手前のペン先や奥の軸はやわらかく見せる。さっき困った特徴を、そのまま表現に使えるわけです。
ふみ「説明する写真なのか、雰囲気を楽しむ写真なのかで変わるんだ。」
「そう。どこまで見せたいかを決めると、ボケとの付き合い方も変わるよ。」
りこセンサーの大きさで 写る範囲が変わる
ふみ「センサーが小さいと、写る範囲も変わるの?」
「そう。同じレンズ・同じ位置なら、小さいセンサーは中央の狭い範囲を写す。」
りこ
ふみ「同じレンズでも、写る範囲が違うんだね。」
同じ範囲を写すなら 焦点距離を変える
ふみ「じゃあ、同じ範囲を写したいときは?」
「小さいセンサーなら、短い焦点距離のレンズを使うんだ。OM-5の35mmと、フルサイズの70mmで、ほぼ同じ範囲が写るよ。」
りこ
ふみ「それで『70mm相当』なんだね。写る範囲を比べやすくする目安なんだ。」
今度はペン先を もっと大きく写したい

ふみ「全体はわかった。次は、このペン先の細かいところを見せたいな。」
万年筆のペン先へ近づいてみます。両方ともF2.8、35mm判換算で70mm相当。S5IIは70mm、OM-5は35mmに合わせた撮影です。


ふみ「OM-5のほうは、ペン先がずいぶん大きく写るね。同じ70mm相当なのに。」
「近づける距離が違うからね。今回の12–40mmは、小物にぐっと寄れるレンズなんだ。」
りこ小さなものをどれだけ大きく写せるかは、カメラだけでなくレンズとの組み合わせでも変わります。マイクロフォーサーズでは撮影倍率を35mm判換算で表すと2倍になるため、小さな被写体を画面いっぱいに見せやすい面もあります。
今回の写真で見たいのは、数値の大小より「いつもの標準ズームで、ペン先をここまで大きく見せられる」という使い勝手です。フルサイズにも接写が得意なレンズはあります。手持ちの組み合わせで、どこまで近づけるか試してみると発見があります。
横から見ると 撮影距離の違いもわかる


横から撮った写真では、レンズと万年筆の距離感も見えてきます。画面に大きく写るという結果だけでなく、実際にどこへカメラを置くのかまで想像しやすくなります。
ふみ「机の上の小物なら、寄れるズームは便利そう。毎回、接写用のレンズに替えなくていいし。」
「何をよく撮るかで、使いやすい組み合わせが変わるんだね。」
りこでは、いつも持ち歩いているスマホはどうでしょう。iPhone 17 Proでも、4倍の設定で万年筆を撮ってみました。

ふみ「これも、ペンの様子を伝えるには使いやすそう。」
「ちょっと見せたいときに、すぐ撮って送れるのもいいところだね。」
りこ近づけることと 撮りやすいこと
スマホの超広角を使えば、さらに近づいた写真も撮れます。ただ、近づけば近づくほど楽になるとは限りません。

ふみ「ここまで寄れる! ……でも、自分の影が入っちゃった。」
「光をさえぎるくらい近いんだね。周辺の形の見え方も気になるなら、少し離れるか、別の撮り方を選ぼう。」
りこ小さなものを大きく見せたいときは、写る大きさだけでなく、影を作らずに撮れるか、形がどう見えるかも大切です。スマホで気軽に済む場面もあれば、少し距離を取って撮れるカメラとレンズが使いやすい場面もあります。
ふみ「寄れるほうが勝ち、というわけでもないんだ。」
「撮ってみて、見せたいものが素直に伝わる方法を選べばいいんだよ。」
りこ窓際の食材を 気軽においしそうに

今度は、明るい窓を背にしたかぼちゃとみかん。手前の食材と、後ろの窓や植物を一緒に写してみます。



ふみ「iPhoneの写真、なんとなくおいしそう。後ろの植物や窓も、どんな場所かわかるね。」
「細かい設定を考えずに、その場の雰囲気まで残しやすいのは便利だね。」
りこ今回は色の設定を揃えていませんが、そのまま撮った写真の違いにも、普段の使い分けのヒントがあります。食材を引き立てる写りも、その場所の様子がわかる写りも、それぞれに使いどころがあります。
難しく考えずに撮れることも 大切な長所
スマホは全体にピントを合わせやすく、撮影時の自動処理も助けになります。iPhoneのHDRは、明るさの違う画像を組み合わせて明暗差を整える仕組みです。窓際などで、明るい背景と手前のものを一緒に残したいときに役立ちます。
ふみ「ミラーレスでも、窓と食材を両方見せられる?」
「もちろん。明るい部分を見ながら露出を決めたり、撮影後に暗い部分を調整したりできるよ。どう仕上げるか、自分で考えられる楽しさもあるね。」
りこ今回の写りの違いを、HDRだけの効果と決めることはできません。それでも、撮る人が設定や現像を細かく考えなくても、見せたい写真に近づけてくれる手軽さは、スマホを選ぶ理由になります。
例えばお店で、料理と店内の雰囲気を一緒に残したいとき。大きなカメラを構えるのは少し気が引けるけれど、スマホならさっと撮れる。料理が冷める前に撮って、すぐ食事に戻れることも、日常では大切です。
ふみ「きれいに撮るために頑張りたい日もあるけど、今日はさっと撮って食べたい、という日もあるもんね。」
「そういう日の使いやすさも、ちゃんと長所なんだよ。」
りこ何をどう残したいかで選ぶ
ふみ「最初は、フルサイズなら何でも一番だと思っていた。でも、ペン全体を見せたいのか、細部を大きく見せたいのかで、欲しい写りが変わるんだね。」
「雰囲気を作りたいときも、その場で気軽に残したいときもあるからね。」
りこフルサイズのボケを生かす。マイクロフォーサーズと寄れるレンズで小物を見せる。スマホで食べ物や周囲の様子を手早く残す。どれか一つがいつでも正解というわけではありません。
次に写真を撮るときは、カメラを構える前に「この写真で何を見せたい?」と一度考えてみる。その答えから選ぶと、手元の道具のよさが見つけやすくなります。