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作品一覧 / 矛盾――盾も矛も、悪くなかった?

故事成語の4コマと読み物

矛盾――
盾も矛も、悪くなかった?

矛と盾を持って困惑する商人と、朱赤で書かれた「矛盾」の文字。

商人は、武器を試される前に言葉に詰まりました。

盾が割れたわけではありません。矛が折れたわけでもありません。客に、たった一つ質問されただけです。

「その矛で、その盾を突いたら、どうなる?」

「矛盾」の由来としておなじみのお話です。でも、あの商人は、いったい何を間違えたのでしょう。

矛盾の故事を描く4コマ。矛と盾を自慢する商人に、客がその矛でその盾を突いたらどうなるか問い、商人が答えに詰まる。

商品への苦情は、まだ一件もない

昔、中国の楚の国に、矛と盾を売る人がいました。

盾を持てば、どんなものにも突き通されないと自慢する。矛を持てば、どんなものでも突き通せると自慢する。

そこで客が、その矛と盾を組み合わせたらどうなるのかと尋ねると、商人は答えられなくなりました。

ここで少し立ち止まってみましょう。

この話を聞いて、「粗悪品を売ろうとした商人が見破られた」と受け取ってはいないでしょうか。

けれど、物語の中では商品の性能を試していません。盾も矛も、実際にどれほど優れていたのかはわかりません。

わかったのは、二つの売り文句が、両方とも正しいということはありえないという点です。

客が突いたのは、盾より先に、説明のつじつまでした。

言い切らなければ、売れたかもしれない

商人の売り文句を、少し変えてみます。

「丈夫な盾です」
「鋭い矛です」

これなら、同じ店に並んでいても問題ありません。丈夫な盾と鋭い矛は、両方あってよいのです。

ところが商人は、そこに「どんなものでも」を付けました。

どんなものにも突き通されない。
どんなものでも突き通せる。

「どんなもの」の中には、隣で売っている商品まで入ってしまいます。

矛を褒めれば、自分の盾では防げないことになる。盾を褒めれば、自分の矛では突き通せないことになる。

どちらの商品も立てようとして、説明どうしを戦わせてしまったのです。

商品の魅力を大きくするための言葉が、説明できる範囲を超えてしまった。そう読むと、この商人の失敗は少し身近になります。

私たちも、同じ店を開いている

「何でも気軽に相談してください」

そう言ったあとで、相談してきた人に、

「そのくらい、自分で考えてください」

と言ってしまう。

もちろん、自分で考えてほしい場面はあるでしょう。ただ、最初の「何でも」を相手が信じていたら、話が違うと感じるはずです。

「相談してほしい」と「自分で考えてほしい」は両立します。たとえば、「まず考えてみて、困ったら相談してください」と伝えればよいのです。

矛も盾も、扱い方を説明すれば同じ店に置けます。

困るのは、それぞれを別の場面で強く言い切って、二つを並べたときのことを考えないままでいるときです。

意見が変わることまで、矛盾?

一方で、「前と言っていることが違う」というだけで、すぐに矛盾とは言えません。

朝は晴れると思っていたけれど、昼に予報を見て、雨が降ると思い直した。新しい情報を知って判断が変わったのであれば、前の考えと今の考えが違うのは自然です。

「この盾は何でも防げる」と言っていた商人も、途中で、

「言いすぎました。この矛まで防げるとは保証できません」

と説明を直せば、少なくとも同じ二つの主張を続けずに済みます。

間違いに気づいたあとに大切なのは、以前の言葉を守り抜くことより、何をどう直したのかを伝えることかもしれません。

商人に、もう一度売ってもらうなら

あの商人に、もう一度店先に立ってもらうとしましょう。

あなたなら、矛と盾にどんな売り文句を付けますか。

「どんなものでも」を使わずに、それぞれのよさを伝えてみてください。考えてみると、絶対と言い切るより、具体的に褒めるほうが難しいことに気づきます。

何を防げる盾なのか。
何を突き通せる矛なのか。
どんな場面で役に立つのか。

そこまで話せれば、客も商品を選べます。

「矛盾」は、二つの主張や物事のつじつまが合わないことを指す言葉です。

誰かの食い違いを見つけたときだけでなく、自分が自信たっぷりに話しているときにも思い出したいものです。

その売り文句は、隣の売り文句と並べても大丈夫でしょうか。

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