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漁夫の利 勝つことばかり考えていた二人

漁夫の利の単体イラスト

相手が先に離せばいい。

こちらから離したら、負けたことになる。そんなふうに考えている間に、二人とも別の誰かにつかまってしまう。

「漁夫の利」は、争っている者をよそに、第三者が利益を得ることです。得をした漁師はよく覚えていても、捕まる前の二者にどんな時間が流れていたかは、あまり考えないかもしれません。

漁夫の利の故事を描く4コマ

最初から同じ立場ではなかった

貝が殻を開いているところへ、シギが飛んできて、その身をつつきました。貝は殻を閉じ、シギのくちばしを挟みます。互いに相手が先に死ぬと言い合い、離そうとしません。そのまま、漁師に二者とも捕まってしまいます。

この話を「どちらも意地を張った」で済ませる前に、一つ確かめておきたいことがあります。最初につついたのはシギで、貝は身を守るために殻を閉じました。最初から二者が同じことをしたわけではありません。

だから、争いをやめるという話を、被害を受けた側が黙って我慢する教訓にしてはいけないでしょう。

離せばよい だけでは足りない

ここからは、物語を手がかりに考えてみます。

貝が先に開けば、またつつかれるかもしれません。シギも、くちばしを挟まれたままでは飛び去れません。二者が安全に離れるには、ただ「仲よくして」と言う以上の工夫が要りそうです。

相手が何をやめれば、自分も何をやめられるのか。第三者に間に入ってもらえないか。守るべきものを守りながら、争いを終える方法はないか。

原典には、その解決方法までは書かれていません。だからこそ、捕まった場面から一つ前へ戻って、考える余地があります。

漁師が来てからでは遅かった

『戦国策』では、蘇代がこの話を使って、燕を攻めようとする趙の王を説得します。燕と趙が争って疲れ果てれば、強い秦が漁師のように利益を得るかもしれない、と警告したのです。王は攻撃を取りやめます。

小話の中では二者は捕まりますが、その小話を聞いた王は、同じ結末を避けました。

ここに、読み返す楽しさがあります。故事は、失敗を見て笑うためだけにあるのではなく、まだ起きていない失敗を止めるためにも語られたのです。

いま 見えていないもの

相手との言い争いが長引いているとき、失っている時間や、置き去りになっている仕事はないでしょうか。

勝ったあとに守りたいものが残っていなければ、勝負の意味も変わってしまいます。

「相手に勝てるか」の隣に、「このまま続けて、何を失うか」を置いてみる。漁師の姿が見える前に、少しだけ視野を広げてみたいものです。

出典:『戦国策』燕策二「趙且伐燕」。貝は原典の「蚌」、鳥は「鷸」によります。現代の対立解決への問いは、この読み物の解釈で、原典の解決策ではありません。

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